男湯に、はいり込んできた女はまさしく牛の化物であつた。 斑点のある生物であつた。 実に痩こけた老婆であつたが、その皮膚は瀬戸物のやうに、真白に光沢があつた。 俗にシラコといふ不気味な皮膚をしてゐた。 二人の痩た老人夫婦は、おたがいの膚に触れあつて、たがひの背中を流し合つてゐる様子が、いまにも崩れ折れさうな枯れ木が、押あつてゐるやうであつた。 婆さんは臆面もなく素裸であちこち歩き廻つた。 ――ちよつと、御免なされや。 かういつて、婆さんは俺の背中に、その人間離れをした白い皮膚の股を触れたりして、平気で湯を汲んだのであつた。 歳をとると、羞恥心などは遠くに置き忘れてしまふのだ、私はしんみり考へながら慌てゝ湯槽に飛込んだ。 老人の裸体ほど醜怪なものはない、下腹の皮が、唇のやうに垂れ下がつて、歩く度にぶら/″\と揺れた。 それにくらべて、お麗さんの体はどんなであつたらう。 モデル台の上に立てはにかんだ彼女は。 皮膚は張切つてゐて、筋肉はどこもこゝも今にも叫びさうに身構へてゐたのであつた。 小さな街の画家連は急に裸婦を描きたくなつたのだ。 冬は青いものがみんな雪の下に隠れてしまふので、情熱家達はその憂鬱な感情の捨場に苦るしんだ。 ――研究会を開かう、モデル女をみつけようぢやないか。 気の早い日本画家の蘭沢は、すぐ飛び出て、そして何処からかお麗さんを発見できた。 早慶個別スクール 釧路市の学習塾 - 個別指導塾ぐんぐん わかる→できる→うれしい→成績 ...