「おや、雨の音が……。あしたの小金井行きはあぶのうござんすよ」 雨はあしたの日曜まで降りつづいて、わたしの小金井行きはとうとうお流れになった。その翌年の五月なかばに、半七老人の去年の話を思い出して、晴れた日曜日の朝から小金井へ出てゆくと、堤《どて》の桜はもう青葉になっていた。その帰り道に府中へまわると、町のはずれに鵜を売っている男を見た。かの友蔵もこんな男ではなかったろうかと思いながら、立ち寄ってその値段を訊くと、男は素気《そっけ》なく答えた。「十五円……。お前さんはひやかしだろう」 いよいよ友蔵に似て来たので、わたしは早々に逃げ出した。自動車保険 我が上の星は見えぬ