「いや、もう毎晩のこと、決してお構いくださるな」と、澹山は書きかけていた日記の筆を措いて見かえった。「お父さんはどうなさった。きょうは一日お目にかからなかったが……」「父は午から出ましてまだ戻りません。今夜は遅くなるでございましょう」 伝兵衛は囲碁が道楽で、ときどき夜ふかしをして帰ることは澹山も知っているので、別にそれを不思議とも思わなかった。「兄さんは……」「兄も父と一緒に出ました」 おげんは茶をすすめて、更に柴栗を剥いてくれた。その白い指先をながめながら澹山はしずかに訊いた。「御用人の御子息はその後御催促には見えませんか」「はい」「どうも思うように出来ないので甚だ延引、なんとも申し訳がありません」と、澹山は小鬢をかいた。「頼まれたお方が余人でないので、せいぜい腕を揮おうと思っているのですが、それがため却って筆先が固くなった気味で、まことにどうも困っています。千之丞殿も定めて御立腹、ひいては御推挙くだすったお父さんにも御迷惑がかかろうと心配していますが……」ネットビジネス 副業 副業をすると、会社にバレるの? - Yahoo!知恵袋