「和尚さんはここらの溝のなかに死んでいたんだそうだね」「はい」「そこにその仏像が落ちていて、しかもそれがお寺の物だという。そうすると、和尚さんの落ちた時に、それも一緒に落したのかね」「そうかも知れません」「隠しちゃいけねえ。正直に云って貰いたい」と、半七はすこし詞をあらためた。「実はわたしは町方の御用聞きだ。寺社とお係りは違うけれど、こういうところへ来あわせては、調べるだけのことは調べて置かなければならねえ。その晩、和尚さんがその仏さまを持って出たのかえ」 相手の身分を聴くと共に、小坊主の態度は俄かに変った。かれは今までとは打って変って、半七の問いに対して、何でもはきはきと答えた。 かれは時光寺の英俊であった。師匠の英善がゆくえ不明になった晩、かれは師匠の供をして根岸の伊賀屋へ行った。読経がすんで、一緒に連れ立って帰る途中、師匠はほかへ路寄りすると云って別れたまま再び戻って来ない。東大阪市 歯科 歯医者 岩見 流言は知者に止まる