「おい。何かあったのかい」「おかみさんが殺されて……」 お竹は声を立てて泣き出した。半七もさすがに呆気に取られた。「誰に殺されたんだ」 返事もしないでお竹はまた泣き出した。賺して嚇してその仔細をきくと、女あるじのお寅はゆうべ何者にか殺されたのである。表向きは何者か判らないと云っているが、実は娘のお菊が手をくだしたのである。お竹はたしかにそれを見たと云った。お竹ばかりでなく、女中のお豊もお勝も、おなじくお菊の姿を見たとのことであった。 果たしてそれが偽りでなければ、お菊は云うまでもなく親殺しの罪人である。事件は非常に重大なものとなって半七の前にあらわれた。今まではさのみ珍らしくもない町家の娘と奉公人の色事と多寡をくくっていた半七は、この重大事件にぶつかって少し面喰らった。「だが、こういう時に腕を見せなけりゃあいけねえ」と、年の若い彼は努めて勇気をふるい興した。楽天市場 名入れ 夢彩工房 うちわ名入れならアスクル - アスクルスピードプリントセンター