「親分、どこへ」「観音様へ朝参りに行った」「ちょうど好いとこでした。今ここに変なことが持ち上がってね」 男は顔をしかめて小声で云った。かれは下っ引の源次という桶職であった。「この下っ引というのは、今でいう諜者のようなものです」と半七老人はここで註を入れてくれた。「つまり手先の下をはたらく人間で、表向きは魚やとか桶職とか、何かしら商売をもっていて、その商売のあいまに何か種をあげて来るんです。これは蔭の人間ですから決して捕物などには出ません。どこまでも堅気のつもりで澄ましているんです。岡っ引の下には手先がいる。手先の下には下っ引がいる。それがおたがいに糸を引いて、巧くやって行くことになっているんです。それでなけりゃあ罪人はなかなかあがりませんよ」 源次はこの近所に長く住んでいて、下っ引の仲間でも眼はしの利く方であった。それが変な事をいうので、半七も少しまじめになった。「何だ。なにがあった」「人が死んだんです。お化け師匠が死んだんです」ファンド設立・ファンド組成 - ファンド監査 銀座悠和公認会計士共同事務所 Send the good life - トップページ