私が蜘蛛の巣を払うのは勿論いたずらではない。しかし命賭けでもこれを取払わねばならぬというほどの必要に迫られている訳でもない。単に邪魔だとか目障りだとかいうに過ぎないのである。これが有ったからといって、私の生活に動揺を来すというほどの大事件ではない。それと反対に、彼に取っては実に重大なる死活問題である。彼が網を張るのは悪戯や冗談ではない、彼は生きんがために努力しているのである。彼は生きている必要上、網を張って毎日の食を求めなければならない。彼には生に対する強い執着がある。毎日払い落されても、毎日これを繕ってゆく。恐く彼はいよいよ死ぬという最終の一時間までこの努力をつづけるに相違あるまい。 私は、彼に敵することは能ないと悟った。 小さい虫は遂に私を征服して、私の庭を傲然として占領している。遺品整理 大阪 遺品整理 - 夜逃げの後処理のことならリリーフへ